2016年10月30日日曜日

фэнтезиは女性か中性か

英語には名詞の性がないが、外来語としてロシア語に入ってきた場合、ロシア語ではその名詞の性を決めなければならない。ロシア語の名詞は語尾に応じて性が決まるが、外来語の場合、元々のロシア語の単語にはない語尾で終わってしまうため、どの性を取ればよいかが確定せず、揺れているものがある。言語学の対象となる現象だが、SF界では外ならぬfantasyがこれに当たる。

fantasyはロシア語表記ではфэнтезиである。これを女性とみる場合と中性とみる場合とに見解が分かれている。下記サイトの書きぶりを見ると、中性と取る方の勢力が強そうだ。http://otvet.expert/kakoy-rod-v-russkom-yazike-u-slova-fantasy-zhenskiy-ili-sredniy-229226

しかし、fantlab上でも、過去にこの議論はあって、トピックが立っている。https://fantlab.ru/forum/forum1page5/topic5261page1
fantasiaという単語は女性なので、そちらに意味としては引っ張られるという女性派も多い。

エクスモ社が2005年に"Хулиганское фэнтези"というレーベルを刊行していたときは中性になっている。しかし、2008年には"Черная Fantasy"という名のレーベルとなり、女性になっている(ロシア語と英語がちゃんぽんだが)。

トールキンの『指輪物語』の翻訳が完結して刊行されたのはソ連崩壊後のことであって、ファンタジーというサブジャンルはロシアにはそれまで存在しなかったと言ってよい。広い意味で言えば、ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』はファンタジー以外の何物でもないし、アレクサンドル・グリーンもファンタジーだと思うが、現代ロシアではファンタジーと言えば、トールキン以来のハイファンタジーの系統を頭に浮かべるのが普通である。それにしても、ソ連時代にまったく存在しなかったハイファンタジーが、ソ連が崩壊するや否や翻訳を中心にたちまち大流行し、マリヤ・セミョーノワ、ミハイル・ウスペンスキイ、スヴャトスラフ・ロギノフ、エレナ・ハエツカヤ、ダリヤ・トルスキノフスカヤ、マリナ&セルゲイ・ジャチェンコ、ゲンリ・ライオン・オルジらが続々とロシア語のファンタジーを発表していったのも非常に不思議である。

ちなみに、хоррорも堂々たる外来語だが、ロシア語のホラー作家は近年までなかなか出現しなかった。これも不思議なことである。じっくり考えてみないといけない。

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